【イベントレポート】歯科医院の組織運営に求められる目的管理、「OKR」とは?
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2020.09.12

その他

【イベントレポート】歯科医院の組織運営に求められる目的管理、「OKR」とは?

今回、2020年8月28日(金)に開催された「歯科医院にとって 今、求められるOKRとは?〜「目的管理」が もっと、チームを強くする〜」のセミナーの様子をお伝えします。

どんな歯科医院でも共通の課題が、この「組織づくり」と、そして、「モチベーション」となります。また、コロナ禍の今、外部環境が大きく変化している中で、改めて、組織の結束力が求められています。

このような中で、メルカリやGoogleなどIT業界を中心に取り入れられている「OKR」という手法が、IT業界以外でも導入が進んでいます。
「OKR」によって、目標管理ではなく、「目的」管理を中心とし、ワクワクする指標の設定を行うという手法のご紹介と、実際に導入している歯科医院の事例をご紹介するセミナーを開催しました。

【登壇者】
奥田 和広(株式会社タバネル/代表取締役)
山岸 睦季(士別やまぎし歯科/院長)

【モデレーター】
大井 憲太郎(DentaLight)

数々の「OKR」の支援をしてきた奥田さんに解説いただきました!

大井:
最近はコロナ禍の影響もあり、多くの歯科医院で「組織づくり」と「スタッフのモチベーションマネジメント」への課題意識がより高まってきました。
このような中で、Googleやメルカリなどの成長企業を中心に取り入れられている「OKR」という手法が注目を集めています。
そこで、今回はOKRの仕組みの解説と、実際にOKRを歯科医院経営に取り入れて成功された事例の紹介をさせていただきたいと考えています。
さっそくですが、まずは奥田さん、よろしくお願いします。

奥田:
私は父がアパレルの会社を経営していた影響で、大学を卒業してからアパレル企業に就職をしました。その後、証券会社に転職したのち、父の会社に入って事業を任されていました。
このように、新人会社員として働いたり、父と一緒に経営者のような経験を積み、その後に一般企業やコンサルティング企業を経験した過程で出会ったのがOKRという手法でした。

OKRはアメリカのインテル社が開発して、その後Googleも取り入れた「組織における目標管理」の手法の一つです。日本でも、急成長を遂げているメルカリやSansanなどのIT企業が導入していることは徐々に知られてきましたが、現在では業種を問わずさまざまな会社がOKRに注目をしています。

さて、OKRを理解する上で、まずは「組織とは」ということを理解しなければなりません。
組織とは「複数の人がわざわざ集まって、一人では成し遂げられないような共通の目的の達成を協力して目指す集団」のことで、そのためにはメンバー間で多くのコミュニケーションが必要になってきます。
ただ、多くの組織の場合、そもそも目的や目標を忘れてしまったとか、自分は頑張っているけれど他のメンバーがどのくらい努力しているのかわからない、といった状況が生まれています。

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組織が機能するためには、メンバー自身が「チームの一員である」という自覚を持つことが一番重要で、そこに「リーダーへの深い信頼」が組み合わさることで、そのチームの中に熱量が高いメンバーが増えてきます。

ここまでご理解いただいた上で、本題の「OKR」についてご説明します。OKR(Objectives and Key Results)とは、3ヶ月間程度の近い未来の目的もしくは目標(Objectives)と、それに近づくための結果指標(Key Results)からなるものです。

Objectivesを決める際のポイントは、売上や利益などの数値的なものではなく、ワクワクするようなメッセージ性のある目的を設定することです。結局、数字や日常業務に追われると、「目的の実現を目指したい」という気持ちが薄れていってしまうんですね。だからワクワク感が大事なんです。
また、メンバー自身が「そういう目的を達成したいのであればぜひやりたい」という意志を持つこと、そしてメンバー全員が同じ方向に向かっていけるような納得感のある目的を設定することも大切です。

OKRが従来の目標管理と違う点としては、「重要なものに集中する」ことが挙げられます。10個も20個も目的や目標を設定せずに、とにかく「この3ヶ月間はなにに集中するのか」を絞って決めることです。
そして、メンバー全員が組織の中の状況を把握することができると、高い次元での協力関係が生まれるので、透明性もすごく重要になってきます。

あとは、目標に向かって努力をした結果をどう捉えて次に活かすのか、という運用面も考える必要があります。一人ひとりが「チームの一員である」という自覚を持つことで組織の中に熱意が生まれるようになるので、その状態に持っていくために高い頻度で意識を高める場を設けていくことがOKRの運用においては重要で、そのためにはお互いに本音を言い合える心理的安全性を確保することも大事になってきます。
高い目標を掲げると、うまくいかないことももちろん出てきますが、そこではお互いに頑張ったことを認め合って称賛し合う場を意識的に設ける必要があります。些細なことでも、感謝の気持ちを伝え合える状態を作ってください。

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要するに、OKRを一言で表すと「ワクワク巻き込み振り返り」ということですね。

>単なる目的管理じゃない!スタッフがワクワクする「OKR」とは?

OKRを取り入れた士別やまぎし歯科の、学びと成長の記録

大井:
では続いて山岸先生、お願いします。

山岸:
私は北海道の士別市という、人口約2万人ほどの地域で開業しました。
開業時の話ですが、会計事務所の人に「まずは経営理念を考えてください」と強く言われた記憶があります。そこで「歯科医療によって地域のみなさまのお口の健康の維持と予防に努め、スタッフとクリニックに関わる全ての人々がともに豊かな生活が送れるように貢献していく歯科クリニックであり続ける」という経営理念を掲げてこれまでやってきたのですが、今年で開業して7年目になったタイミングでいろいろと煮詰まってきたんです。というのも、日々の診療を淡々とこなしていくだけで売上も伸びてきたので、自費率の向上を目指すことも特にしていなくて、そんな時にDentalightさんとの出会いがあったんですよね。
そこで、あらためてビジョン・ミッションを考え直してみてはどうかという話になって、OKRを取り入れることになりました。

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うちでは1年間をだいたい4つのクォーターに分けてOKRを運用していますが、私たちはなるべくスタッフ全員にミーティングに参加してもらって、全員で目的・目標を決めるようにしています。
そのようにして決めた”Objectives”は「ミーティングを積極的に行いホウレンソウができていて、風通しが良い笑顔いっぱいなクリニック」で、そのための”Key Results”としては「SPTをメンテナンスに移行して増やしていくこと」を掲げました。
その結果、4月の時点ではSPTが0人だったのに、今では80人くらいまで増えてきました。物販も伸びていて、OKRを取り入れる前は歯ブラシの売上が月間2万円くらいだったところ、3ヶ月後にはその約10倍の売上になりました。
ただ、売上が伸びたことは結果でしかなくて、大事なのは「スタッフがそのくらい患者さん一人ひとりの健康と向き合う意識を持てるようになった」ということです。

スタッフは、「日々の努力がどれだけ報われたのか」「自分のスキルを患者さんに発揮することができたのか」という”自分の仕事の成果”とちゃんと向き合いたいんですよ。そこに院長が後ろからガタガタ言うからつまらなくなる。そうならないためのOKRでもあって、理念をしっかりとスタッフに共有して理解してもらって、自分の頭で考えて行動してもらえるようにするためのツールがOKRなんです。

もちろん、あたらしい仕組みを導入することによって組織の中に「スタッカーモデル」と呼ばれる混乱期も必ず訪れますが、その混乱期を一緒に乗り越えることができたメンバーとの間には統合期が訪れます。この一連の流れが、クリニックにとっての楽しい物語のひとつになるのかと思います。

 

そのためにも、経営者はスタッフ一人ひとりが抱えている悩みや、仕事においてなにを重要視して働いているのかを理解して、それをサポートしてあげることが重要だと思います。
だからこそコミュニケーションの頻度を上げることが必要なんです。

奥田:
OKRってどうしても「目標管理」の意味で捉えられることも多いのですが、山岸先生は「コミュニケーションツール」だと捉えて実践されているところが素晴らしいですね。

そもそもOKRってどうやるの?質疑応答では色々な角度から質問が飛び交いました!

大井:
ありがとうございました。ここでセミナーに参加してくださっている方からお二人に寄せられた質問を紹介したいのですが、OKRにおいて失敗したことはありますか?

奥田:
失敗したことというよりは、「OKRを取り入れたけれどうまくいかないんです」という相談を受けることはあります。
組織全体でOKRに取り組む心の準備、覚悟ができていないと、混乱期を迎えた時に「こんなことが起きるならやめてしまおう」という判断をされてしまうことがあります。
OKRは導入することよりも、コミュニケーションツールとして「運用すること」がとても大切なんです。1回あたりの時間は短くてもいいので、とにかくコミュニケーションの頻度を増やしていく仕組みづくりができていないとうまくいきません。

山岸:
奥田さんがおっしゃったように、やはり慣れないものを取り入れると組織は混乱するんです。だから経営者がやらなければいけないのは、スタッフみんなが同じ方向に向かえるように、行き先に向けて光を照らしてあげることだと思います。「おれはこういうことをやりたいんだ」という光ですね。
あとは、スタッフからどんな意見を言われても怒らない器の大きさも重要じゃないかと思います。

大井:
ありがとうございます。次ですが、目的の細分化・数値化のプロセスについてもう少し詳しく教えていただきたい、という質問もいただいています。

奥田:
トップダウンとボトムアップの2パターンがあるんですが、そのどちらかだけではダメなんですよね。まずはトップが方向性を示して、それに対してスタッフから意見を集めて、しっかりと対話をした上で最終的にはトップがその意見を集約していくような流れで決めることが大切だと思います。

大井:
私もいくつかの院でOKRを実施していますが、数値化に関していうと、まず最初に「今の医院の数字がどうなっているのか」を全体共有することから始めています。

奥田:
振り返りの段階からスタッフを巻き込んでいくのは大事ですね。いきなり一方的に理想を掲げるとスタッフもついてくることができませんし。

大井:
最後に山岸先生に質問ですが、7〜9月のOKRの状況について教えていただけますか?

山岸:
掲げていた3つの目標のうちの2つをスタッフが達成してくれたので。OKR自体はあくまで目的を達成するためのツールでしかないので、次のクォーターに備えて毎週の振り返りだけを行っています。
当初イメージしていた「風通しの良いクリニック」という状態は実現できてきて、今では院長主体のクリニックじゃなくなってきているんですよ。OKRをうまく運用できるようになると、スタッフがどんどん輝いてきますよ。

まとめ

歯科医院経営において、スタッフのマネジメントに課題を抱えている方は、ぜひOKRを取り入れてみてはいかがでしょうか。
その際は、売上や利益などの数字にとらわれずに、「ワクワクするような未来の目的実現・目標達成のために協力しあえる関係づくりをどうするべきか」を考えてみましょう。

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