【イベントレポート】患者さんの満足度は目に見えるものだけではない。「プロフェッショナル」として生きる松丸 悠一先生の3つの流儀とは?

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今回は2020年9月11日に開催したオンラインセミナー「3 RULES 〜松丸 悠一 先生の3つの流儀〜」の様子をお届けします。
総義歯の専門家として圧倒的な技術と経験を誇り、学会や研修会講師として数多く招待され、海外においてもその技術やアプローチに注目を集める松丸先生が考える仕事の流儀とは?

モデレーターの角 祥太郎先生と、DentaLightの代表取締役CEOの藤久保 元希がお届けします。

【登壇者】
松丸 悠一先生

【モデレーター】
角 祥太郎 先生
株式会社DentaLight  藤久保 元希

 

患者が希望を失わないアプローチ

角先生:
今日は松丸先生に、仕事で大切にしている3つのルールを伺いたいのですが、さっそく1つ目のルール「患者さんが希望を失わないアプローチ」について詳しく教えてください。

松丸先生:
私が仕事としている総義歯臨床は、「歯科」が歯を大切さを患者さんに伝える最後のステージだと考えています。
ただ義歯による機能回復は物理的に限界があり、だからこそ精神的なところでカバーしていかなければなりません。言い換えると、患者さんがいかにその限界を意識せずに上手く扱ってくれるか、そして明るく元気に過ごしてもらえるかというところまで考えていかなければなりません。

そのため、「義歯による限界はここまでなんだ」とネガティブな気持ちにならないような次の引き出しを用意して提案しながら治療を進めることで、現状を前向きに受け止めてもらえるようにアプローチしています。

たとえば、いきなり最初から「この治療が最善の方法です」と提案して、その治療が結果として患者さんの期待に答えることができなかったとしたら、患者さんはそこで希望を失ってしまいますよね。私たちが技術的に最善と思う方法を最初から提案したことによって、結果的に患者さんの気持ちがふさがってしまったら、その患者さんの人生って豊かになっていかないと思うんです。これでは患者さんに寄り添えていないのと一緒だなと。

角先生:
単に歯科的な治療をするのではなくて、感情曲線を設計しながら患者さんと向き合ってるんですね。

藤久保:
物理的な治療と精神的なケアとで分けると、それぞれどのくらいの比率で重要視していますか?

松丸先生:
チェアサイドでは基本的に精神的なケアのことを考えてます。総義歯を含めた補綴治療って、ベストを言い出したらきりがなくなってしまうんですよね。組織の治癒や検査値の変化などで治療の程度を測ることができないためにゴールの落とし所が違ってくるのだと思います。

角先生:
そのほうが、患者さんにとっては「少しずつ生活が楽しくなっていきそうだな」という気持ちになってもらえるかもしれないですね。

松丸先生:
その通りで、結局はコミュニケーションとストーリーなんですよね。それが補綴治療において大切なのだと思います。

個人ではなくクリニックに安心を

角先生:
2つ目のルール、「個人ではなくクリニックに安心する態度」についてお話しをお願いしたいんですが、これって「歯科医個人ではなくてクリニック自体に価値を感じてもらうようにすべき」ということですよね?

松丸先生:
患者さんの多くは非常勤の専門医を指名してそのクリニックに訪れるわけではないですよね。なので、どのようにその患者さんの治療を終えるべきかを考えた時に、「ここのクリニックに来てよかった」と言ってもらうことを目指すべきだと思っています。
術者として患者さんとの個人対個人の関係に集中してしまうと、そのクリニックで患者さんの価値観やストーリーを理解できるスタッフがいない状況も起きうるし、患者さんとしても不安になると思うんですよ。

藤久保:
ただ単に技術提供して終わりではなくて、クリニック自体に安心を抱いてもらうわけですね。

松丸先生:
今までの経験でも、紹介してくれたドクターやそのスタッフが最後まで私の担当した患者さんに声をかけてくれたり、考えてくれているクリニックは患者さんにも安心感がありました。

角先生:
もしも特定の先生の人気が高かったとしても、「その先生を呼ぶことができるほどのクリニックなんだ」と思ってもらえるようにすることってとても大事ですよね。治療をしながら、そこで得た先生個人に対する信頼をクリニックに向かわせるような。

藤久保:
患者さんには、いつのタイミングでどのようにクリニックへ意識を向けてもらうようにしていますか?

松丸先生:
患者さんの抱えてる不安が6〜7割解決した段階ですね。
繰り返しになりますが、患者さん個人の価値観やストーリーをどれくらいクリニック全体で共有できるかが大切だと思います。ただの「ものづくり」だったら分業したほうが良いんですが、僕たちの仕事って患者さんの感情まで考えないといけない。患者さんが自身の未来を預けたいと思えるクリニックになるためには、その患者さん個人が抱えている不安に個人ではなくクリニック単位で寄り添う姿勢が大切なんだと思います。

歯科技工士のやりがい

角先生:
最後に3つ目のルール、「歯科技工士のやりがいを忘れない」について聞きたいのですが、これについては松丸先生は以前からおっしゃってましたよね。

松丸先生:
たとえば私が学術的に50点の総義歯を作ったとしても、コミュニケーション次第では患者さんは上手く使ってくれます。これって総義歯臨床って技術が全てではないということを意味していると思うんです。そして作り直すこともできる。だからこそ、まだ若くて経験の浅い先生でも咬合再構成の成功体験を得るチャンスがある。

ただ、だからといって技術に妥協してはいけないと思うんです。歯科技工士さんの存在を考えると、本当にそういう妥協ってできなくなる。

現在はデジタル化も進んでいますが、とはいえ大事なところは手仕事でやらなければならないし、手仕事であるからこそ同じオーダーでもクオリティに差が生まれると思っています。
だからこそ、歯科技工士さんをプロとして真摯に接するべきだし、熱意と緊張感を持ってもらうための治療を心がけなければならないし、言葉だけじゃないコミュニケーションを歯科技工士さんと取っていく必要があるのではないかと考えています。

角先生:
たしかに技工士さんや歯科衛生士さんって僕たちの仕事をよく見てるし、僕たちがどう接するかで態度も変わってきますよね。

松丸先生:
患者さんに対してはもちろんですが、歯科技工士さんの存在を尊重し、その仕事のレベルが上がるような状況をつくりあげることで、結果として患者さんにより良い治療が提供できると信じています。

私の場合、仕事においては歯科技工士さんのことを51%、患者さんのことを49%くらいの比率で考えています。患者さんの満足度を高めることだけを考えていると技工物に対する認識が不足し、治療自体の質の低下にも繋がります。だからこそ技工士さんがやりがいを持って仕事をしてもらうこと、そのやりがいを意識するように心がけています。

まとめ

自らの治療経験だけではなく、数多くの歯科医院を現場で見てきた松丸先生だからこその、「歯科業界」そのものを俯瞰してとらえた考え方を学ぶことができました。
さらに、患者さんの満足度を本気で考えることは、本来、目の前の患者さんのことだけではなく、一緒に働くスタッフ、そして、そのクリニックや歯科医院全体が非常に重要であるということです。患者さんは一人の歯科医師や歯科衛生士だけではなく、そのクリニック・歯科医院を信頼して通っていることを忘れてはいけないと実感しました。

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