2021.04.04
その他【イベントレポート】「人生を預かる」覚悟を決めたなみき通り歯科の安藤先生の3つの哲学とは?
今回は2021年3月8日に開催したオンラインセミナー「3RULES 一切の妥協をせず、「意味」を問い続けてきた安藤 壮吾先生の哲学とは?」の様子をお届けします。
愛知県名古屋市にある「なみき通り歯科」院長 安藤 壮吾先生にご登壇いただきました。
今回は、3RULES史上初の院内WEB内覧会ツアーを実施した後に、開催しました。
モデレーターの角 祥太郎先生と、DentaLightの池田がお届けします。
【登壇者】
なみき通り歯科 安藤 壮吾先生
【モデレーター】
角 祥太郎 先生
株式会社DentaLight 池田 龍太朗
向かう先は丁寧に、行動は今すぐに
本日は、3RULESと題しまして、安藤先生が大切にしている3つの哲学について、お話をお聞きできればと思いますので、よろしくお願いします。
よろしくお願いします。
先程、院内をみさせていただきましたが、今に至るためにこの空間の中で継ぎ足したり、それこそ、トイレが院長室というのもストーリー性がありますよね。
最初開業したときに思い描いていたビジョンと、今は、全く変わったというのがあるんでしょうね。
どんな風に変わったんですか?
8年前に開業したときというのは、一般的に勤務医時代の、いわゆる治療の延長ですよね。 インプラントだとか提要とか読んで、歯が無い人にどんな風にQOLを獲得してもらうかが、当時は自分の最終的なゴールなんだなとある時は思っていましたし、当然、今も歯科医師として、やはり質の高い治療を提供することは当たり前のことなんですけど。 その後に、ベクトルがいかに疾病を起こさないかという方向に変わっていきましたね。
どうして変えることができたんですか?
先がみえていたとかそういう、経営者として優れているとか、歯科医師としてスキルが高いとかあんまり思わないんですね。 ただ、一つちょっと人と違うなと思うところが、例えば何かをしようとしたときに迷っている時間が基本的にもったいない。
もったいない。
例えば、1年間迷って1つのアクションを起こす場合と、1か月に1回アクションを起こす場合は、12回分違う。だめだったらやり直せばいい。 すごく才能があって天才的な感性で一発でバーンと結果が出せる人は、しっかりと自分で思い描きながら一つの行動というものに対して集中すればいいと思います。僕はそういうことがなかった。
まさにですね。
やっぱり自分の歯科医師としてのピークの年齢や期間が20年や15年なのか分からないですけど、動ける時期というのが限られていますよね。 その時間をなるべく有効的に使おうかなというふうに思ってやっています。
3RULESのこの一つ目の「行動は今すぐに」は本当にわかりやすいですね。「向かう先は丁寧に」というのはどうですか?
治療主体型から、予防主体型に医院を切り替えたときは、それこそ、僕の中では何度も何度も考え、最終的には決断でき、大きく舵を切り替えましたね。
だめだなとかつらかった時期とかあるんですか?
この予防主体型に変えた時が、一番苦しかったですかね。それこそスタッフは本当に大変だっただと思います。 当時は、個室ではなかったので、治療やメンテ・スケーリングなど、バタバタと一つのチェアで行っていました。その状況から、日吉歯科の熊谷先生と出会い、予防のいろはをいろいろ教えていただいて、そのシステムを取り入れました。
今までとはかなり状況が変わりますよね。
そうなんです。急に個室になり、スタッフもやることが増え、患者さんも、今まではすぐ削って治療してくれたのに、治療の前に検査やリスクマネジメントをしてという話になるので、結構キャンセルがダーッと続きましたね。 あのときは本当にしんどかったかなという。
自分一人ではなくてスタッフさんや患者さんにも影響することなので、スタッフさんを巻き込むというところがやっぱりポイントですよね。 そのあたりで、安藤先生が意識されていたことはありますか?
僕の中での医院や組織づくりっていうのは、誰がやっても同じ結果が出るという平均的な医院を目指すよりも、それぞれの個性を、院長はパズルのようにうまくあてはめていくというのが、僕の中での組織づくりかなと思うんですよ。
パズルのようにですね。
そうですね。悪いところや短所を改善するのではなくて、光るものや良いところをとにかく徹底的に伸ばしていくという。 そして、それがどこにはまるんだろうとか、この子はどういう所だったら、やりがいを持っていけるのかなというその辺りのパズルを組み合わせるのが院長の仕事かなと思っていますね。
この件に関連して、質問をいただいています。 「長所を見つける時に、どのようなスキルが必要なのでしょうか」
まず、長所がないということはあまりないと思うんですよね。 その上で、どういうタイプなのかという見極めが大事だと思います。例えば、褒めて伸びるタイプや、褒めるタイミングを間違えると逆に伸びないとか。あとは、声を掛けるタイミングとかですね。
スタッフによって変わりますよね。例えば、小さい機会を与えた方が良いとか。
そうなんですよね。大きく与える子もいます。だからそういうバランス、仕事の割り振りとか分量は、僕は間違えちゃいけないかなと思っているんですよね。 それこそ、仕事のやりがいって、例えば、先輩たちがいながらも「ここは●●さんがすごいな」って「ここは、●●さんしかできないよね」っていうところが1個でも2個でもあると、やっぱりそれだけで仕事って見方が変わってくると思うんですよね。
小さいステップからまずは機会をつくって、その後、フィードバック。 「あれどうだったとか」というそういう小さな声掛けやコミュニケーションのサイクルは大事ですよね。
人生を預かる覚悟
では早速、2つ目に移りたいと思います。
「人生を預かる覚悟」ですね。 僕も含めてですが、働くスタッフは、例えば家族や結婚していなければ彼氏、友達よりも職場で長い時間過ごしますよね。ほとんどの時間を職場で時間を過ごしますが、そうすると、今、生きている社会人としての人生というのは、ものすごくその場所に影響されるわけじゃないですか。
そうですよね。
だから、ここで働いて給料をもらって、それで良かったね、ああ、辞めていくんだ、じゃあねという単純なことではないと思うんですよね。長い人生の中で、僕の中では、なみき通り歯科で働いた数年というのは自分の人生にすごく良かったなとか、自分にとってすごくいい時期だったな、成長できた時期だったなというふうに最後振り返ったときにポッと現れてくれるといいなと思っています。
それいいな。体験ってなくならない価値で財産であり、報酬でもありますね。
でもやっぱりそうやって支えてくれるスタッフを見ていると、こっちもやっぱり責任を持って人生を支えていかないといけないと感じますよね。 やっぱりこれからの時代というのは、誰もが働く時代で、昔みたいに専業主婦でという時代ではないんですよね。ライフステージと捉え、しっかりと責任を持ってスタッフたちの人生、彼ら・彼女たちの後ろにある家族とか、大切な親とかもそうかもしれないですけれども、その人生も預かるという覚悟ですよね。 そのためには、働く環境はちゃんと整えていかなきゃいけないなっていうのが今度の移転のコンセプトになりますね。
移転がそういうコンセプトなんですね。覚悟しているっていうのは嬉しいですよね。 その医院に行ったら自分は3年後どうなるのかなというのが分からないというのは不安というのが、現状ありますよね。
ちなみに「人生を預かる」という点について質問が来ています。読み上げますね。 「安藤先生ありがとうございます。今から新規開業ですがスタッフの面接などで、いいスタッフを見分けるポイントなどありますか」ということです。
ないですというか難しいですね、これは本当に。 ただ、最近だと、僕が見極めているというよりも、もう見学した子たちが、うちのスタッフを見て「あ、ここやばい。きついから無理」だとか「ああ、ここまで私レベルが到達していないから今回辞退します」というふうに、ある程度スタッフたちのレベル感で選んでくれるようになったと思いますね。 あとは、「ああなりたい」とか「あっ、ここでちゃんと予防学びたい」とかいうマインドの方が大事ですよね。面接だけだとわからないんですよね。
オープニングスタッフさんが今もついてきてくれるのはすごいですよね。
本当すごいですね。僕もオープニングスタッフも変化しています。 当時は、当然、どの子が自分の医院の軸になってくれるかどうかなんてことは、わかりませんでした。入り口で見極めることも大切だとは思いますが、新規開業時は、来てもらった人にどう輝いてもらうかが大切ですね。
いい人にきてほしいとばかり、外に依存するのは良くないですよね。来てくれた人のこの人をどう生かすか。
いや、本当にそうですよね。だから僕は本当に勉強になりましたね。ここまで光るのかと。 僕の自分の思い描いていた以上に、スタッフたちが成長していって光り出すと、本当に嬉しいですね。
説得力がすごいですね。実際、オープニングスタッフの皆さん、残っていますからね。
ありがたいですよね。本当に。
バチバチとバトルみたいなこともあったんですかね。
もちろんありましたよ。普通にありましたし、ぶつかり合うときも当然ありましたからね。それはどこもそうじゃないですか。僕も未熟だったし彼女たちもまだまだ若かったしというのもありますから。高め合うためにはそういうふうに良いチームはできていくのかなと思っています。
このテーマについて、もう一つ質問がきています。「尊敬している人はいますか?」とのことですが、いかがでしょうか?
野村克也監督です。「財を残すは下、業を残すは中、人を残すは上」という話があります。 うちの内診の彼が開業するわけですよね。そのときにじゃあここを卒業して、彼が医療人として、歯科医師として、どういった歯科医師になって開業医になって地域とか患者さんとかスタッフに対して何を作り上げていくかっていうのが、僕にとってめちゃくちゃ大事なんですよ。
キーワードですね。「人を残す」
うちの医院では、次の重要なコンセプトとして「教育」を考えています。 患者さんだけではなく、うちのドクターや衛生士、助手さん、いわゆるこれからの時代を担っていく子たちの教育。こんな大きい医院を建てたいなということではなくて、やっぱりしっかりと医療人としての基礎をつくっていきたい。 当然、基本的な治療のスキルや知識とかは当たり前です。でもやっぱり、将来満足のいく歯科医療が提供できるのか、あるいはそういう医院がつくれるのかというのは全然別の問題です。ですので、これからは、この医院からどういった人たちが卒業していくのかがすごく大事かなと思っています。
意味と縁の拡大
3つ目は「意味と縁の拡大」ですね。これは、例えば、「移転します」と発信したときって、皆さんからすると、移転や拡大はすごいねということを大きく取り上げがちで、いろんな捉え方をされますよね。
拡大軸に近い話で言うと、儲かる・儲からないでいったら、たぶん大きくしない方が儲かりますよ。だからそういう意味では勘違いされがちですね。ただ、今回は、僕は教育や予防医療というものをある程度自分の医院の中で今よりも完結できるようにしたいと思っています。 よく「おまえいいよね。成功しているけれど」って言われますけれども、成功の基準なんて人それぞれで。
そういう風に言われることがあるんですね。
やっぱり、自分が歯科医院を経営する上で何をしていきたいのか、あるいは、何を残したいのかということが大事だと思いますね。僕は結果、「人」だったんです。「人」を残したいと。そして、人を残すためには何をすればいいのか。
人を残す。何度聞いても素晴らしいですね。早々すぐには出てこない。
さっきも言ったようにこれには教育が重要です。スタッフや患者さんだけではなく、スタッフの子どもたちもそうですよね。 例えば、自分のスタッフの子どもたちがどういった大人になっていくかという教育はとても大事ですよね。それに対して、うちでは、幼稚園に入る前の教育っていうのを福利厚生で提供したいと思っています。そうすると、例えば、自分が働いているから、自分の子たちにいい教育を与えてあげられなかったというふうに思わないようになればと思っています。 うちで預かることができる期間っていうのは数年なんですけど、そこも大事かなという。
そのアイデアとかひらめきや気づきってディスカッションとかしていたとか、スタッフさんとの話だったりとかなのか、自分でこう空想しているのかとか。
あとはもう一つ意味と縁というところで、内科の先生からご質問いただいています。 「医科歯科連携を越えて医科歯科ボーダレスな診療を目指しています。一つ目として、先生の医院では医科歯科連携を含めた医療連携で、どのようなことを大切にされていますか?」ということです。
ご質問ありがとうございます。医科歯科連携に関しては、例えば今だったら小児科であれば、隣の小児科の先生の所に2カ月にいっぺんですね、衛生士とドクターを連れて一緒に勉強会をしています。院長同士のディスカッションだとどうしても限界があります。なぜなら、患者さんを一番見ているのは衛生士なんですよね。 例えば歯科の一番いいところっていったら、定期検診で来られているお子さんが結構小さい時期からきますので、この時期から事前に察知できる可能性がありますので、事前に定期的に勉強会を行い、共通言語をもっておくことが大事ですね。
2つ目のご質問です。「医院運営で、医院では院内ミーティングはどのくらいの頻度で、また、どんな形式で実施していますか?」ということです。
全体ミーティングは1カ月に1回やっています。それはオールスタッフで。小さなミーティングであれば、ドクターや歯科衛生士だけのミーティング、これも月1回。ドクターと衛生士間での情報共有。 あとは、毎日、朝と昼、具体的には、午前診療の前と、午後診療の前の15分間でやります。例えば、その日にいらっしゃった患者さんの症例検討ですね。ここは説明した方がいいよとか、この問診は聞いた方がいいよとかいうことを個人個人でやるのではなくて、全体の前でやることによって情報も倍速でシェアできます。
ドクターや衛生士が自分の患者さんのことを話をする。
そうです。今日はこういうことを患者さんと話をしますとか、こんなことを患者さんに聞こうと思いますとか。 あとは、それこそ、全体でやるので、話す練習にもなりますね。患者さんとは、話さなければいけないですよね。そのトレーニングになるんですよ。僕らの前で失敗するのは全然いいので、それはある程度指導してあげながら毎日毎日やっていくと、やっぱり慣れてきますよね。
ちなみに質問が来ています。先程の長所の話に戻るかもしれませんが、「安藤先生が伸ばしてあげたい長所とスタッフがやりたいこと、伸ばしていきたいことが一致しなかった場合はどちらを優先しておりますか」
やりたい方ですかね。「●●を実践したいんです」ということにNOは言わないですね。やりたいと思ったときっていうのは、その子が一番成長しようとしているタイミングなので、それを摘んじゃうと逆にもう二度と出てこないかもしれない。悪い言い方をすると。そこは伸ばしてあげないといけない。それを聞いて、なるべく実践させてあげる。
先生のお話を聞いていると、先ほどのスタッフさんが自分の患者さんのことを話すというのもそうですし、アウトプットする機会がたくさんあるなというイメージです。 そうすると、やりたいこともどんどん出てくるのかなという感じますね。
次の移転に向けて
これまで話してきた通り、単純に医院を大きくするのではなく、ここには、想いをはじめ、本当に色々なコンセプトが詰まっています。ぜひ見学も来ていただければいいかなというふうには思っています。
ありがとうございます。安藤先生のお話と、それこそ、この3RULESの事前の打ち合わせのときもですが、その根本に目的があるということを強く実感しました。 コミュニケーション自体がお好きでうまいという部分もあると思いますが、仮に口下手だったとしても、向き合う本気さというのが、いろんな方たちを巻き込んで次のステージに行かれようとされているのかなという印象をすごく受けました。
今日は、僕はスタンスが決まっていることが大事だなと学びました。方法論やノウハウは、再現性がないと思っていますが、そのときにスタンスがグッと決まっているかどうかということが大事ですね。 例えば、僕は自分のこの歯科医師というライセンスをどうすれば最大限に光らせるかということに、興味があるので、今日はすごく刺激を受けました。僕もチャレンジですね、行動量をどんどん増やしていきたいなと思います。本当にありがとうございました。
座談会みたいな形で大切な皆さまの時間を使っていただき、そして、たくさんご質問もありがとうございました。SNSを通じてでもいいですし、実際ちょっと会って話をしたいなということがあれば気軽に声を掛けていただければと思います。 本当に僕はそんな偉そうな人間ではなくてですね・・・いろいろ試行錯誤しながらやっていますので、ぜひ皆さんとまたリアルでディスカッションできたらいいかなと思います。今日はありがとうございました。