定期健診に通ってもらうために歯科医院ができること 〜前編〜
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2021.08.31

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定期健診に通ってもらうために歯科医院ができること 〜前編〜

患者さんに定期健診を促すにはどうすればいいのか、定期受診を継続してもらうには何ができるか、様々な調査や研究結果から見えてきたことを、前編・後編に分けてお伝えいたします。
今回は前編として、歯科における定期健診の意義と現状について取り上げたいと思います。

 

トピック

歯科の定期健診はなぜ必要?

定期健診に通っている人はどのくらいいる?

 

歯科の定期健診はなぜ必要?

定期健診の話題に入る前に、まずは日本における歯科疾患の現状を整理しておきましょう。歯科疾患実態調査(厚生労働省が5年毎実施、2011年までは6年毎)の結果からDMFT指数の年次推移をみると、各年齢階級において減少しています*1。特に低年齢層のう蝕減少は顕著で、小児歯科ではカリエスフリーを目指して定期的な来院をされる方も増えているのではないでしょうか。成人においてもう蝕は減少していますが、未処置歯を有する者の割合は依然として高い*1状況にあります。

歯科疾患実態調査の結果から作図

歯周病については「4mm以上の歯周ポケットを持つ者の割合」の増加傾向がみられましたが*1、従来との記録方法の違いによる影響も指摘されており*2、年次推移による有病率の増減は一概には言えません。しかし、2016年の調査で「4mm以上の歯周ポケットを持つ者の割合」は35歳以上で40%を超えており、「歯肉出血を有する者の割合」は30歳以上55歳未満で40%を超えている*1ことから、歯周病の有病率の高さは明らかです。さらに、2016年の「8020達成者」は51.2%と、2011年の40.2%より増加しています*1。生涯残せる歯が増えたことに関連して、根面う蝕や歯周病に対するケアは今後より一層重要になってくるものと思われます。

以上のことから各ライフステージにおいて、今後ますます「歯科疾患の予防」のための歯科受診のニーズが増えることが予想されます。

歯科における定期健診の意義としては、有名なアクセルソン博士の30年にわたるメンテナンスの研究結果から、定期的に歯科医院でプラークコントロールを受けることによって、う蝕や歯周病の発生を低く抑え、より多くの歯の喪失を防ぐことが可能*3であることが挙げられます。もちろん定期的なチェック・プロフェッショナルケアに加えて日々患者自身がセルフケアを継続して行い、定期健診に通い続けたことの要因も大きいと思います。このことから、定期的な歯科受診と日々のセルフケアを継続してもらうことが、患者さんの歯を生涯守るために重要だということがわかります。

定期的なメンテナンスではの喪失は防げる

参考文献


*1 厚生労働省:平成28年 歯科疾患実態調査結果の概要
*2 安藤 雄一, 岩﨑 正則, 竹内 倫子, 北村 雅保, 玉置 洋, 柳澤 智仁:平成 28 年歯科疾患実態調査の解析作業報告および今後に向けた提言. 口腔衛生会誌 68:106-113, 2018.
*3 P Axelsson, B Nyström, J Lindhe:The long-term effect of a plaque control program on tooth mortality, caries and periodontal disease in adults. Results after 30 years of maintenance. J Clin Periodontol 31(9):749-757, 2004.


 

定期健診に通っている人はどのくらいいる?

それでは、歯科における定期健診に通っている方はどのくらいいるのでしょうか。日本における調査を2つご紹介したいと思います。

①「国民健康・栄養調査」*4の結果から(厚生労働省が毎年実施)

2016年の調査で「20歳以上で過去1年間に歯科検診を受けた者の割合」は52.9%で、年次推移でみると有意に増加しています。年齢別では年齢が高いほど過去1年間に歯科検診を受けた者の割合が高くなっていることがわかります。参考までに、健康日本21(第二次)における2022年の「20歳以上で過去1年間に歯科検診を受けた者の割合」の目標値は65%となっています*5

国民健康・栄養調査の結果から作図

②「歯科医療に関する生活者調査」*6の結果から(日本歯科医師会が隔年実施)

2020年の調査では、定期的に歯のチェックを受けている人は33.8%でした。2018年の同調査と比較すると、ほぼ全ての年代で、歯の定期チェックを受ける者の割合が上昇していましたが、特に10・20代で定期チェックを受けている者が少ないことが目立ちます。また、歯の定期チェックを受ける者のうち約76%が「半年に1回以上」チェックを受けていると回答しています。

歯科医療に関する生活者調査の結果から作図

調査によって違いはあるものの、全体の1/3から1/2くらいの方が定期的な歯科受診をしており、年々その割合は増加していることがわかります。

どちらの調査結果からも、年齢の低い層で定期的な歯科受診率が低いことが共通して伺えます。若い層では仕事や子育て等で忙しいことや、年齢が高い層に比較して自身の健康への関心が低い可能性も考えられ、特に若い層に対して口腔への関心を高めることが必要だと思われます。

スウェーデンでは約90%が定期健診に通っています

参考文献


*4 厚生労働省:平成28年 国民健康・栄養調査結果の概要
*5 国立健康・栄養研究所:健康日本21(第二次)目標項目一覧
*6 公益社団法人日本歯科医師会:2020年 歯科医療に関する生活者調査 Part1Part2
*7 Anu Molarius , Sevek Engström, Håkan Flink, Bo Simonsson, Ake Tegelberg:Socioeconomic differences in self-rated oral health and dental care utilisation after the dental care reform in 2008 in Sweden. BMC Oral Health 14, 134, 2014.


 

>後編「定期健診に通う人とそうでない人の違い、定期健診に通ってもらうために歯科医院ができること」はこちらから