【イベントレポート】こども歯科じゅんこクリニックが、「OKR」を通じて得た組織の手応えとは?
アイコン

GENIE NOTE

ジニーNOTE

2021.04.26

その他

【イベントレポート】こども歯科じゅんこクリニックが、「OKR」を通じて得た組織の手応えとは?

今回は2021年3月25日に開催したオンラインセミナー「地域の健康を守るために「スタッフ主導」の組織を目指す〜私が「OKR」を選んだ背景とは?〜」の様子をお届けします。
山口県防府市にある「こども歯科じゅんこクリニック」院長 徳冨 順子先生にご登壇いただきました。

【登壇者】
こども歯科じゅんこクリニック 徳冨 順子 先生

【モデレーター】
株式会社DentaLight 大井 憲太郎

 

こども歯科じゅんこクリニックが直面した出来事

アイコン

今回、スタッフ主導の組織を目指すために、「OKR」という手段を選択した徳冨先生に、まずは今まで、どんなお悩みあったのかについてお伺いしていきたいと思います。

アイコン

宜しくお願いいたします。

アイコン

このOKRを選ぶ前というよりも、そもそも、医院ではどんなことが起きていたのですか?

アイコン

当時は、スタッフが楽しく長く働ける職場を目指していたにも関わらず、退職者が続出することがありました。ベテランの方の働きに感謝をし、若い子は伸び伸びやってほしいと思っていたのですが、ある時「先生は若い子ばかりひいきする」と言われ、それがすごくショックでした。

アイコン

医院のためにと思っていたことが、実は想定と異なっていたんですね。

アイコン

そうでしたね。また、昨年チーフ決めをした際には、割とリーダー的な立場のスタッフが憤慨して「なぜあの人がチーフなのか」というのがありました。新人を迎えることを決めておりましたので、私としては仕事ができるというよりも、院内のまとめ役としてどの人がいいかという観点で決めたのですが…。

アイコン

当時、どう感じたのですか?

アイコン

私のリーダーシップの問題なのかなと、まず思いました。 スタッフの意見はできるだけ聞くようにしていたのです。そうしてたつもりが、あるとき私の上に立っているスタッフがいることに気がつき…というのが現状でした。

 

>小児歯科での活用事例多数!歯科医院専用の診察券アプリmyDentalとは?

 

「理念」を共有することからスタート

アイコン

大井さんから、理念を共有するのが大切なんじゃないかという助言をいただいて、私は理念を言ってなかったとは思っていなかったのです。

アイコン

徳冨先生からもお伺いしたことはありましたので、私もそう感じていました。

アイコン

そうなんです。スタッフを採用するときには、理念をお話しし、共感も得ていたと思ったので、私はてっきり分かってもらえていたと思い込んでいたのですね。共有まで落とし込めていなかったことが反省点です。

アイコン

そこで、早速、「満足を超えて、感動をしていただける診療と対応をしましょう」ということをスタッフに改めて丁寧に共有することにしました。

アイコン

本当に、素晴らしい理念ですよね。

アイコン

ありがとうございます。そして、これは開業時の私の考えでもあるのですが、女性スタッフが社会への貢献とか自分の学びと成長を実感できるような歯科医院にしたいと申しました。また、ここは非常にむし歯が多い地区で障がいをお持ちの方もたくさんお越しになるので、細やかな気遣いができるレベルが高いチームを作りたい、というお話をしました。

 

 

理念を実践するために「OKR」を導入

アイコン

その後、理念を元に、準備を進めていきましたね。 その前にOKRとは何なのか?をご紹介します。 元はIT企業でよく使われていたもので、目標を管理したり理念を浸透させて、これを日々の行動に落とし込んでいく一手法です。「OKR」というのはObjectives(目的)とKey Results(重要な結果指標)です。「Objectives」は達成したい姿、こんなチームを目指そうという定性的なもので、「Key Results」はそれを具体的な数字で見ていくものです。数値目標だけを追うことは多いと思いますが、それだと結局ノルマになって疲弊してしまいます。そもそも何のためにやっているのかという、Objectivesを言葉にするのが非常に重要なポイントです。目標を決めたら、週1回ミーティングの場でこの1週間どんなことを頑張ったのか、問題点などを皆で共有した上で、次の1週間どういうことをやっていくのか話し合います。このようにObjectives達成に向けて、毎週、賞賛・対話・挑戦をぐるぐると回していきます。

※奥田和広著『本気でゴールを達成したい人とチームのための OKR(Discover 21出版)』を参考に作図
 >参考記事はこちらのリンク先から

アイコン

大井さんのアドバイスを受けて、まずこれから1年で目指すことを考えました。OKRを始めたのが2月で、まだ3カ月たっていない状態です。外来、環境、教室・連携、ということで作っていきました。問題点としては平日午前の予約がなかなか埋まらないので、そこを埋めること。それから患者さんのファンづくりとして、卒園や入学の記念に写真を撮ってお渡しするのもどんどんやる。環境としては、ミーティングを毎週して、勉強会もぜひ参加しましょうということ。連携という点では、耳鼻科さんと連携して1年少々になるのですが、かなりご紹介いただいています。こちらから、発達が気になる等のお子さんを紹介するのもしていきたい。このような感じで、直近の3カ月から1年以内にしたいことを挙げていきました。

 

アイコン

理念の共有はよく言われることで大事なのですが、どうやって伝えるのかが一番難しいところです。OKRは理念を話して終わりではなく、これを日々の目標、行動に落とし込んでいくためのものです。先ほどお話の中にあったように、3カ月これに集中しよう、だったら3カ月どういうチームを目指すのか、注目する数字は何か、を言葉にする。

アイコン

その通りですね。一方通行で、伝えて終わりになってしまいがちですよね。

アイコン

数値だけを追うとノルマになって疲弊してしまう。そもそも何のためにやっているのかというObjectivesを言葉にするのが非常に重要なポイントです。徳冨先生からスタッフの皆さんに理念をお話しいただきましたが、反応はいかがでしたか。

アイコン

言っていたつもりというのが、本当に痛感しましたね。初めて聞いたというような反応でしたが、概ね好評というか感動してくれて、私が理念を話したときに、みんな「あ、そういうことなのか。だから私たちはこうやっているんだな」という反応が見られて、非常に嬉しかったですね。 OKR導入前のミーティング終了時には、スタッフが「すごく楽しかった」「こういうミーティングならやっていける」と言っていて、「これならできるな」と思いました。

 

 

「OKR」をやってみた結果は?

アイコン

そして、「OKR」ObjectivesのOについて、3カ月後に達成したいチームの状態や目指したい姿を、皆さんに付箋に書いていただきました。これをもとに院長先生が目標を1個決めます。そして決まったのが「各自のポジションを極めて皆さんのために笑顔で働く」です。

アイコン

いろいろ意見は出たんですね。大井さんから言われたのが「このObjectを実現するため、朝飛び起きて、仕事に行きたいような、そんなObjectを設定しましょう。」ということで(笑)スタッフは皆、地域に貢献したいとか、みんなのために働きたいという想いが強くて、それで積極的に動くとか自分の責任を果たそうとか、そういう意見が結構出てきました。

アイコン

Objectivesがみんな本当に達成したいものかどうかが非常に重要で、これを決めることが最初のステップです。Objectivesが決まったら、次に数値目標を決めていきます。これまで数値目標などを立てていなかったとお聞きしていましたが、皆さんで決めたときの現場ではいかがでしたか。

アイコン

この3カ月に重視することで、私が午前の予約数16名というのを出していて、まずは決まったのですね。今まで数字をどうこうしていなかったので、スタッフも数字で表すというのは何だろうという相当悩んだみたいですね。

アイコン

初めてやると皆さん、色々と考えながら、意見を出されることが多いですね。

アイコン

色々と考えた結果、出てきた意見としては、新患数や定期健診に来ていただいているのか、実際に数字として見える化してみようと考えてKRを設定していきました。

アイコン

付箋にあるように、こういう数字に注目して、これくらいを目指したらいいのではないかという意見をみなさんからいただき、これをもとに院長先生に「これでいきましょう」と決めていただきました。最終的に決まったのが次のスライドです。

アイコン

皆さんの意見をもとに目標を決めていく工程はやってみていかがでしたか。

アイコン

数字を意識する習慣がなかったので、数字を見ていく雰囲気をつくれて非常に良かったと思います。新患予約をなかなか入れられない状態なので、平日午前中の新患数と、定検というか自院でいうリコール枠に関して決めていきました。

アイコン

OKRを決めた後は、週に1回朝礼や終礼で振り返りをしていただきます。皆さんで数字を見ながら達成できそうか自信度を共有したり、ワークや賞賛をします。その後実際に運用をしていく過程ではいかがでしたか。

アイコン

多くのスタッフが難しいと言ったのが、平日午前中16人というところですね。2月は雪や体調不良で当日キャンセルがあって、特に受付スタッフがしんどそうな場面があったのです。なので、「ノルマではない、これまでよりも高い数字が出ていればいいのではないか、私たちのベストとしてそこを目指そうよ」と言ったら、だいぶ気持ちが楽になったのかなというところです。定検に関しては数字が把握しづらかったのですが、随分患者数が増えているのを実感してたので、そこもいけるのではないのかという雰囲気です。

 

 

OKR導入から現在までを振り返って感じる変化

アイコン

今回理念を伝えるというところから始めましたが、現在まで印象に残っている出来事などありますか?

アイコン

結婚子育てで一度辞めたスタッフが、戻ってきてくれたんです。まだ保育園に入っていないお子さんがいて、「可能なときは働きたい、午前中で週何日かでもいいのですか」と、彼女はすごく自分の立場を気にしていました。来院中の保護者さんと同じ立場である、子育て中のスタッフが歯科医院にいるというのは小児歯科にとって強みなんだ、年上のスタッフはその中をくぐってやってきた人たちなんだからいいんだよ、と言ったらやっと腑に落ちたみたいで、そこが私としては非常に嬉しかったですね。

アイコン

涙ぐまれているスタッフがいたりとか、院内改革として有効だったというところを感じました。

アイコン

「満足を超えて感動を与えるようなクリニック」、それは患者さんだけでなくスタッフも含め、うちに関わるすべての方々に笑顔になってもらいたい、という想いがきちんと伝わったのだと思います。今後もどの年代のスタッフも生き生きと働けるクリニックであり続けたいですね。

アイコン

では、ここからは皆様から頂いたご質問にご回答いただきたいと思います。

 

 

質疑応答

「チームワークを高めるために必要なことは何ですか?」

アイコン

これまでコーチングや付箋を使ったワークとかやってもうまくいかなかった中で、今回「OKR」を取り入れて結構いい感触を得ています。チームワークという点でやっぱり共感だったりスタッフがお互いの励ましだったりとか、あと目標を共有すること「OKR」の「O」ですよね。あと最近朝礼のときの雰囲気が変わってきたのです。毎日担当を決めて何か一言言うのですが、「昨日こういうことがあって困ったけど、◯◯さんがサポートしてくれて助かった」とお互い褒めたりと、マイナス発言が本当に減りました。みんな一生懸命働くぞ!という一体感もあり、非常に嬉しいところです。

 

「スタッフが考えて動ける楽しい職場にするためのスタッフへの関わり方を教えてください」

アイコン

まずスタッフが何か医院に対して取り組みをしたことには「いいね、どんどんやって」と言います。以前は、私が「こうしましょう」と言って、スタッフは「?」という状態でした。今は前向きなスタッフがすごく多くて、それこそ先日研修会を受けたときに「これ取り入れたらいいな」といいうのがあったのですが、あるスタッフがたたき台を作ってきて「いいね、これ進めよう」となり、他のスタッフも「そうそう、これ作ったらいいなと思ってた」という発言があったりですね。あと楽しい職場に関しては、初回のOKR設定会議の後は、私はみんなにケーキを準備をしていて、私の母はお汁粉作って持ってきて、どんだけ糖質多いんだろうと思いましたけど(笑)クスッと笑ってもらえるようなサプライズはよくやっています。

 

「OKRで達成した場合はスタッフに何か還元されるのでしょうか?スタッフにとってのメリットは何でしょうか?」

アイコン

捕捉すると、OKRと評価制度を完全に紐づけるのはあんまり良くないのではと考えられているところもあります。徳冨先生が今考えられていることだったり、スタッフがOKRのどういうところにメリットを感じられているかなどいかがでしょうか。

アイコン

一つは達成感だと思います。高めの数字をだしているので、今までできなかったことを達成したら、ちょっとしたサプライズを準備しようと考えています。話題がずれるかもしれませんが、以前は売上的な部分で悩んでいたのです。2・3月は、数字がすごく上がりました。いつも2月は点数が低いのですが、過去最高に匹敵するぐらいで、今月(3月)もそれに近い数字が昨日の時点で出ているので、そこは何かしらご褒美的なものはしたいと思っています。

 

「今回、登壇をOKしていただけた決め手は何でしょうか?」

アイコン

成功をおさめているクリニックもたくさんある中、逆に言うと進行中で、情けない院長だから思うところもあるのかなと。すごく結果が出た!というのもいいけど、今こういうことをやっているという等身大の発信があってもいいのかなと思ったことが一つ。それから、いろんな手法でなかなかうまくいかなかったけど、「OKR」を取り入れてすごくうまくいっているなという実感があったので、ぜひご紹介したいというところです。あとはDentaLightさんで、大井さんで良かったというところがあります。コンサルさんとかお見えになると、私は非常に委縮してしまうのですが、大井さんは対話をしながらうまく引き出してくださるので。

アイコン

ありがとうございます。一緒にチャレンジしていきたいという方も増えてくると思いますので、ぜひ今後もご登壇いただきたいと思っております。徳冨先生、そして参加いただいた皆さん、本日はありがとうございました。

 

>いま注目のマネジメント手法「OKR」とは?