2021.02.02
法律・制度【2021年版】かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所(か強診)とは?認定されるためにはどんなことが必要なのか。
かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所(か強診)って何?
少子高齢社会の進展とともに、近年歯科領域では、子どものう蝕減少、高齢者における現在歯数増加とう蝕の問題、歯周病患者の増加、全身疾患のある患者の増加といった変化が生まれています。このような状況において、従来の「治療中心型」の歯科治療だけでなく、今後は「治療・管理・連携型」歯科治療の需要増加が予想されます。
以上のような背景から、平成28年度の診療報酬改定で「かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所(以下、か強診)」が新設されました。また、平成30年度診療報酬改定においては、かかりつけ歯科医療機能をより推進する観点から、歯科疾患の重症化予防に関する継続的管理や地域連携等の実績の評価等、かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所の施設基準の見直しが行われました。
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かかりつけ歯科医はなぜ必要?
①かかりつけ歯科医の効果
下記のような研究結果が示されており、かかりつけ歯科医に通院し続けることで、新しいう蝕の発生抑制や現在歯数の維持が期待できます。健康な口腔を生涯にわたって維持することで、個々人のQOL向上だけでなく医療費削減にも関わるため、かかりつけ歯科医の果たす役割はとても大きいと思われます。
出典元:
左)Effect of Preventive Oral Hygiene Measures on the Development of New Carious lesions(Oral Health Prev. Dent, 12, 2014)
中央)高齢者で歯を20本以上保つ要因について~北海道道東地域におけるケース・コントロール研究~(口衛誌, 61(3), 2011)
右)Number of teeth and medical care expenditure(Health Science and Health Care 2017; 17 (1):36−37)
②患者さんが歯科医院を選ぶ理由
厚労省の調査によると、か強診に通院中の患者さんが当該診療所を選んだ理由として、「むし歯や歯周病の定期的な管理をしてくれるから」58.9%※、「清潔感があり、感染対策をしっかりしていると思うから」47.6%※、といった回答が、か強診以外の患者さんに比較して多くみられました。
かかりつけ歯科医を選ぶ際には、施設が安全で衛生的であることはもちろんですが、生活背景や全身疾患・服薬状況等を含め自分自身をよく理解してくれていることは、患者さんにとって大きな安心に繋がります。例えば、糖尿病や骨吸収抑制薬関連顎骨壊死については、歯科医院が医科と連携できていることが非常に大切だと考えられます。
※厚生労働省/かかりつけ歯科医機能の評価や歯科疾患管理料の評価の見直しの影響及び歯科疾患の継続的管理等の実施状況調査報告書(案)概要より
か強診になるには?
か強診になるには、以下の基準を満たし、厚労省から認可を受ける必要があります。平成29年4月時点での、か強診の届出数は7,031施設※です。
※厚生労働省/平成30年度診療報酬改定資料 歯科医療 かかりつけ歯科医の機能の評価より
か強診の施設基準
(1) 歯科医師が複数名配置されていること、又は歯科医師及び歯科衛生士がそれぞれ1名以上配置されていること。
(2) 次のいずれにも該当すること。
ア 過去1年間に歯周病安定期治療(Ⅰ)又は歯周病安定期治療(Ⅱ)をあわせて 30 回以上算定していること。
イ 過去1年間にフッ化物歯面塗布処置又は歯科疾患管理料のエナメル質初期う蝕管理加算をあわせて 10 回以上算定していること。
ウ クラウン・ブリッジ維持管理料を算定する旨を届け出ていること。
エ 歯科点数表の初診料の注1に規定する施設基準を届け出ていること。
(3) 過去1年間に歯科訪問診療1若しくは歯科訪問診療2の算定回数又は連携する在宅療養支援歯科診療所1若しくは在宅療養支援歯科診療所2に依頼した歯科訪問診療の回数があわせて5回以上であること。
(4) 過去 1 年間に診療情報提供料又は診療情報連携共有料をあわせて5回以上算定している実績があること。
(5) 当該医療機関に、歯科疾患の重症化予防に資する継続管理に関する研修(口腔機能の管理を含むものであること)、高齢者の心身の特性及び緊急時対応等の適切な研修を修了した歯科医師が1名以上在籍していること。なお、既に受講した研修が要件の一部を満たしている場合には、不足する要件を補足する研修を受講することでも差し支えない。
(6) 診療における偶発症等緊急時に円滑な対応ができるよう、別の保険医療機関との事前の連携体制が確保されていること。ただし、医科歯科併設の診療所にあっては、当該保険医療機関の医科診療科との連携体制が確保されている場合は、この限りではない。
(7) 当該診療所において歯科訪問診療を行う患者に対し、迅速に歯科訪問診療が可能な歯科医師をあらかじめ指定するとともに、当該担当医名、診療可能日、緊急時の注意事項等について、事前に患者又は家族に対して説明の上、文書により提供していること。
(8) (5)に掲げる歯科医師が、以下の項目のうち、3つ以上に該当すること。
ア 過去1年間に、居宅療養管理指導を提供した実績があること。
イ 地域ケア会議に年1回以上出席していること。
ウ 介護認定審査会の委員の経験を有すること。
エ 在宅医療に関するサービス担当者会議や病院・介護保険施設等で実施される多職種連携に係る会議等に年1回以上出席していること。
オ 過去1年間に、栄養サポートチーム等連携加算1又は栄養サポートチーム連携加算2を算定した実績があること。
カ 在宅医療又は介護に関する研修を受講していること。
キ 過去1年間に、退院時共同指導料1、退院前在宅療養指導管理料、在宅患者連携指導料又は在宅患者緊急時等カンファレンス料を算定した実績があること。
ク 認知症対応力向上研修等、認知症に関する研修を受講していること。
ケ 自治体が実施する事業に協力していること。
コ 学校歯科医等に就任していること。
サ 過去1年間に、歯科診療特別対応加算又は初診時歯科診療導入加算を算定した実績があること。
(9) 歯科用吸引装置等により、歯科ユニット毎に歯の切削や義歯の調整、歯冠補綴物の調整時等に飛散する細かな物質を吸引できる環境を確保していること。
(10) 患者にとって安心で安全な歯科医療環境の提供を行うにつき次の十分な装置・器具等を有していること。
ア 自動体外式除細動器(AED)
イ 経皮的酸素飽和度測定器(パルスオキシメーター)
ウ 酸素供給装置
エ 血圧計
オ 救急蘇生セット
カ 歯科用吸引装置
出典元:関東信越厚生局/かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所の施設基準に係る届出書添付書類
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か強診が算定できる診療報酬
か強診になることで、下記のような診療報酬が算定できるようになります。(令和3年2月時点)
【長期的な継続管理の評価】 | |
歯科疾患管理料長期管理加算(初診月から起算して6月を超えた場合) | |
か強診 | +120点 |
か強診以外 | +100点 |
【長期的な継続管理の評価】 | |
エナメル質初期う蝕管理加算(歯科疾患管理料の加算)(月1回) | +260点 |
※か強診のみ加算可能 |
【歯周病の重症化予防の評価】 | ||
SPT(Ⅱ)(月1回) | SPT(Ⅰ)(3月に1回) | |
1〜9歯 | 380点 | 200点 |
10〜19歯 | 550点 | 250点 |
20歯以上 | 830点 | 350点 |
備考 | SPT(Ⅱ)はか強診のみ算定可能 | 治療間隔の短縮が必要な場合は月1回 |
【口腔機能低下の重症化予防の評価】 | |
在宅患者訪問口腔リハビリテーション指導管理料の加算(月4回) | +75点 |
小児在宅患者訪問口腔リハビリテーション指導管理料の加算(月4回) | +75点 |
※か強診の場合の加算点数 |
出典元:
日本歯科医師会/社会保険歯科診療報酬点数早見表
厚生労働省/平成28年度診療報酬改定の概要 歯科
厚生労働省/平成30年度診療報酬改定の概要 歯科
厚生労働省/令和2年度診療報酬改定の概要 歯科
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まとめ
か強診取得には様々な要件がありますが、今後益ますます需要の見込まれる地域包括医療に対応するためにも、早いうちから準備をしておくことのメリットは大きいと思われます。患者さんにとっても、通院する歯科医院において感染対策や緊急時の対応整備がきちんとされていることは安心感に繋がり、かかりつけ歯科医として選ばれることに繋がります。また、充実した医療設備があること、医療体制がきちんと整っている医院であることは、求人の観点からもアピールポイントになります。しかし、か強診があることを知っているのは、か強診に通院している患者さんで21.4%※、か強診以外の患者さんでは9.2%※、とまだ少ないのが現状です。か強診を取得した際には、かかりつけ歯科医の機能について、地域住民に認知してもらえるよう、院内掲示や説明等の情報発信をすることも大切です。
※厚生労働省/かかりつけ歯科医機能の評価や歯科疾患管理料の評価の見直しの影響及び歯科疾患の継続的管理等の実施状況調査報告書(案)概要より